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岡山MITSuME(三つ目)望遠鏡、120億光年彼方の巨大爆発をとらえる

6番目に遠いガンマ線バースト

東京工業大学、京都大学、国立天文台などからなる研究チーム(注1)が、国立天文台岡山天体物理観測所の50cm反射望遠鏡(通称:岡山MITSuME(三つ目)望遠鏡)注2)を用いて、120億光年彼方で起こったガンマ線バーストの残光をとらえることに成功しました(参考文献1)。これは、これまでに距離がわかっているガンマ線バーストとしては6番目に遠いものです。

GRB060115
左の画像は岡山MITSuME望遠鏡がとらえたガンマ線バーストGRB060115(緑の円の中。Rバンド:650nm)。右の画像は1989年にパロマー天文台で撮られた同じ領域の写真。右の画像ではガンマ線バーストが写っていないことが分かります。

ガンマ線バーストとは

ガンマ線バーストとは、宇宙の一点から短時間に強力なガンマ線がやってくる現象で、1960年代に核実験査察衛星によって偶然に発見されました。ガンマ線バーストには二種類あり、継続時間が2秒以上のものを長時間バースト、継続時間が2秒以下のものを短時間バーストと呼びます。近年の研究によって、長時間バーストの正体は、太陽の数十倍以上の質量をもつ巨大な星がその一生の最後に起こす大爆発であることがわかってきました。その爆発によってブラックホールが生まれると考えられていますが、爆発の仕組みはまだよくわかっていません。

ガンマ線は大気に吸収されるため、ガンマ線バーストそのものは、人工衛星を用いないと観測できません。しかし、爆発の後に急速に減光するエックス線から可視光、電波にかけての「残光」を残します。この残光は、バースト源の距離、環境、バーストの発生の仕組みなどを調べる重要な手がかりを与えてくれます。

世界で岡山MITSuME望遠鏡だけがとらえた画像

今回、岡山MITSuME望遠鏡がとらえたのは2006年1月15日に発生したGRB060115という長時間バーストの「残光」です。残光はバースト発生から時間が経つにつれて急速に暗くなっていくため、時間が勝負です。岡山MITSuME望遠鏡は、バースト発生後6分という迅速な観測によってこの残光をとらえ、その色を測ることに成功しました。

GRB060115可視残光の急速な減光

左の画像はGRB050115 発生後19分後に観測した可視光線(波長 650 nm; 1 nm は、1/1000000mm)画像、右の画像は、発生後 34分後に観測した画像です。わずか15分の間に、急に暗くなり、ほとんど見えなくなる様子がわかります。ガンマ線バーストの観測には迅速さが必要なのです。

GRB060115の可視光3バンドの画像

残光の色の特徴を調べたところ、このバーストが100億光年以上彼方で発生したらしいことが分かりました。

GRB060115可視3バンドの画像

画像は GRB 060115 の可視光3バンドの画像で、白色の円の中心が GRB060115 の位置です。Gバンド(480 nm:1 nm は 1/1000000 mm)では見えませんが、Rバンド(650 nm)およびIバンド(800 nm)では見えています。短い波長では暗く、長い波長で明るいという特徴は GRB060115 が非常に遠方にあることを示しています。

岡山MITSuME望遠鏡の発見を受けて、ヨーロッパ南天文台の8メートル望遠鏡VLTで残光の詳しい分光観測が行われ、バーストまでの距離が120億光年(赤方偏移3.53)と正確に求められました(参考文献2)。岡山MITSuME望遠鏡が予想した距離が裏付けられたわけです。

岡山MITSuME望遠鏡は、口径こそ50cmと小さいですが、緑・赤・赤外(G、R、I)の三色で同時に撮像できる機能と、広い視野(26分角)をもちます。この特徴を生かして、120億光年という遠い宇宙での大爆発を捉えることに成功したのです。

参考文献

  1. Yanagisawa, K., Toda, H., and Kawai, N., “GRB 060115: MITSuME optical afterglow candidate”, 2006, GCN circular No. 4510.
  2. Piranomonte, S. et al., “GRB 060115: absorption redshift”, 2006, GCN circular No. 4520.
  • (注1)文部科学省科学研究費(学術創生研究費)「ガンマ線バーストの迅速な発見、観測による宇宙形成・進化の研究」(代表:河合誠之・東京工業大学教授)による研究チーム。
  • (注2)「MITSuME(三つ目)望遠鏡」とは、ガンマ線バースト残光追跡のために国立天文台岡山天体物理観測所と東大宇宙線研明野観測所に設置された50cm望遠鏡と、岡山天体物理観測所の91cm望遠鏡の3台を総称してつけた愛称です。3台の望遠鏡が協調して観測するということと、両50cm望遠鏡にはそれぞれ三色同時撮像機能があることから名付けられました。なお、MITSuMEは、Multicolor Imaging Telescopes for Survey and Monstrous Explosionsの頭文字となっています。

2006年1月発表

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