巨星のまわりの惑星を発見
日本初の発見!
国立天文台、東京大学を中心とする研究グループは、国立天文台の岡山天体物理観測所188cm反射望遠鏡の高分散分光器HIDES(ハイデス)を用いた観測により、巨星の周りをまわる惑星を発見しました。これまでに、太陽以外の星をまわる惑星(太陽系外惑星)は約100個ほど発見されていますが、日本における発見は今回が初めてです。
太陽系以外にも恒星の周りをまわる惑星が存在する間接的な証拠が示されたのは1995年のことでした。それ以来、約100個の太陽系外惑星が発見され、その存在は揺るぎないものとなりました。現在も世界中の様々なグループの熾烈な競争により、毎年10~20個の割合で、新たな太陽系外惑星が見つかっています。しかし、そのほとんどは太陽に似た星の周りで見つかったもので、太陽より数倍も重い星や、進化の進んだ巨星のような、太陽とは違うタイプの星における惑星系は、これまでほとんど見つかっていません。
2年前から、このような星の周りに惑星を探してきた国立天文台、東京大学を中心とする研究グループは、岡山天体物理観測所188cm反射望遠鏡の高分散分光器HIDES(ハイデス)を用いた観測により、HD104985と呼ばれる巨星の周り(図1)に巨大惑星を検出することに成功しました。この星の質量は太陽の約1.6倍と推定され、進化によって、その半径が太陽の約 10倍に膨れ上がっています。
観測の手法
今回の発見は、惑星からの引力を受けて星がわずかに揺り動かされ、中心の星の速度が周期的に変化する様子をとらえたものです。これまでに知られている太陽系外惑星のほとんどは、この間接的な方法で発見されており、まだ直接的に検出された例はありません。現在、岡山観測所では、高分散分光器HIDES(ハイデス)に「ヨードセル」と呼ばれる特殊なガスを封入したフィルターを取り付けることにより、約5メートル毎秒という超高精度で星の速度変化を検出することができます。今回、惑星が見つかった巨星HD104985では、周期が約198日、振幅が約160m/sの周期的な速度変化が検出されました(図2)。これは木星の約6.3倍の質量をもつ惑星が、中心星から約0.8天文単位の距離を、ほぼ円軌道でまわっていることを示しています。
図2:HD109485の視線速度変化を示したグラフ
横軸は時間で、ユリウス日を用いて示されている。左端から右端までおよそ2年に相当する。縦軸は星の視線速度。赤い点がデータである。黒い曲線は惑星が存在する場合の理論曲線。
今後も続く系外惑星探査プロジェクト!
研究グループは、2001年から岡山天体物理観測所で約180個の巨星を対象に系外惑星探査プロジェクトを進めてきました。今回惑星が見つかった星は、この中の一つです。観測はこれからも継続して行われ、この中からさらに多くの系外惑星が見つかることが期待されます。また、今後はすばる望遠鏡などの大口径望遠鏡も用いて、より多くの星、より暗い星へと対象を広げていこうと考えています。様々な質量や進化段階にある星に惑星を見つけることによって、今後は惑星系の形成から進化に至る過程を統一的に理解することができると期待されます。
図3:HD104985に発見された惑星と、太陽系惑星との比較
概念図であって縮尺は正確ではない。また、惑星表面の模様は想像で描いてある。上が太陽および太陽系惑星を示す。HD104985は太陽の10倍程度の直径を持つ巨星である。今回発見された惑星(HD104985b)は、木星の6倍程度の質量を持つ巨大惑星であるが、母星に非常に近いところ(太陽系で言うと金星軌道あたり)を周っている。
2003年10月発表